無敵になった話
自分がワキガであると気付いたのは小学校5年生の時。母親から指摘されて分かった。
重度なワキガではなかったけれど、くさいものはくさい。
それからは24時間365日脇の臭いが気になって仕方がなかった。1日に5回はデオドラントを塗り直す日々。消臭を心がけてはいても、汗をかくとどうしても臭ってしまう。
思春期にはわざと聞こえるような声で「何かくさいんだけど〜ww」と言われたこともあった。
くさいもんね、本当に。
母親と弟はワキガ持ってなくて、父親と私がワキガ持ち。父親のDNAが恨めしくて仕方がなかった。
ワキガ持ちは自分のせいではないけれど、臭わせているのは自分のせい。本当に本当に毎日辛かった。
授業中
友達と遊んでいる時
電車やバスに乗っている時
映画館で映画を見ている時
とにかく頭の中は常に、「自分がくさいかもしれない」という不安だけ。
そんなに重度なワキガじゃなかったけど、密室に長時間いなくてはならない時はお互いに地獄だった(と思う)。
思い出しただけで死にたくなる。
そしてやっと、今年の春に念願のワキガの手術が受けられることになった。皮弁法の保険適用で両脇合わせて約7万円。
術後の薬やレーザー治療も含めるともう少し費用は高くなるが、それでも安い方だと思う。
ワキガの手術についてネットで調べてみると再発や傷跡についての記事が多く正直めちゃくちゃ怖かった。
それでも一生くさいままよりはマシだと、手術をすることに決定。
(私が手術を受けた病院のHPに、「当病院では現段階で再発は起きておりません」的な事が書いてあったのも後押しになった。)
人生で初めての全身麻酔は本当に怖かった。緊張して前日から胃の痛みが収まらず吐き気もしていた。
手術当日は朝から絶飲食で水すら飲めず……
あとめちゃくちゃ久しぶりにすっぴんで出かけた。
病院に着くとベッドのある個室で待たされる。待っている間に上着を脱いで、乳首を隠すためのガーゼとテープを貼り付けた。
手術台に寝かされて麻酔を打たれたけど、意識が飛ぶまでかなり時間があって、パチンパチンとアポクリン腺を切る音が聞こえて泣きそうだった。
目が覚めると脇がガチガチに固定されていて、アイシング中のピッチャーみたいになっていた。(伝われ)
しばらくは頭がボーッとして自力では歩けなかったから、待合室のベッドで1時間ほど寝て帰った。
片脇ずつ手術を行うので数週間はほぼ毎日病院に通わなくてはいけなかった。傷の経過を見てもらったりガーゼを取り替えてもらったり。病院のお姉さんたち綺麗で優しかったからむしろ嬉しかったけど……
ダウンタイムは傷が痛くてほとんど眠れない生活を送った。
ガーゼを濡らすことも禁止されていたので、毎回ものすごい変なポーズでシャワーを浴びるしかなくてしんどかった。ゆっくりとお風呂に入れないのが地味に一番キツかったかも。
それでもガーゼが取れて、日常生活に戻れるようになってからは世界が変わった。
大袈裟だけど本当に世界が変わったとしか表現できない。
私が受けた手術はにおいを取り除く他に、多汗症を防ぐ役割と脱毛の効果もあった。
ワキガの臭いは消え失せ、脇汗もかかなくなり、ツルツルの脇まで手に入れたのだ〜!!(謎テンション)
それまで脳内の98%を占めていたワキガの不安から解消されたことが嬉しくて、何度も自分の脇をかいでは感動した。
そして私は無敵になった。
めでたしめでたし